二〇〇五年 九月十五日。
病院から、横浜トリエンナーレの前売り券をぴあで買うために、前日ネットで調べておいた一番近い文化放送のぴあへ向かった。
「こんな感じで好いんだっけ」という身体感覚に対する強迫的感覚を感じていたが、歩いているうちに気がつくとその事を考え続ける事が面倒臭くなって、「まあ好いや」という感じで考えるのを止めている。とはいっても、それは面倒だから保留しているだけで、頭の隅で気になっている。しかし、そんな事を気にしている状態を自分でも好ましいとは思っていないし、でも、その思考に何らかの答えを出す前にそれを放棄すると後で何か問題が生じるような気がしてしまう。だが、その思考を放棄する事で失うものより、その事を気にし続ける労力と時間の方がずっと勿体ないから、もう考えるのを止めてただ歩く事に集中する事にした。
四谷は通りから一歩入ると、狭い路地が入り組む全くの下町だった。東京の下町は小さな坂のひとつひとつに名前がついていて、感心する。昔から人が密集して暮らしていて、彼らはこの土地に愛着を持っていたのだろう。そんな中に文化放送はあった。
局舎は思ったよりも小さく、外見は古い校舎のようだ。
ネットには文化放送一階と書いてあったから、きっと一階にロビーがあってその一角にぴあがあるのだと思っていたが、文化放送の入口にロビーなどなく、入口を入るとすぐ目の前にエレベーターがある。実際のぴあは入口の横にある窓だった。
その窓は閉まっていて人の気配がなく、とても営業しているようには見えない。
どうしたものかと窓の前に置いてあるパンフレットなどをごそごそといじっていると、突然がらがらと窓が開いて驚かされた。
「横浜トリエンナーレの前売り券が欲しいんですけど」
「横浜トリエンナーレって何ですか」
「美術関係のイベントなんですけど」
横浜トリエンナーレはそんなに知名度がないのだろうか。
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