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集中と拡大

 二〇〇五年 四月。

 散髪に行った。

 去年知ったナンバ歩きを思い出して、試してみた。足を踏み込む位置が、普通の歩き方より後方にあり、股関節を軽く曲げて、下腹を意識するような姿勢を維持しやすい。普通の歩き方だと足を踏み込む位置が上体より前にあって、地面を踏み締めて前へ進もうとすると股関節を前に突き出す感じになって、それでも腰を少し引く感じで股関節を曲げようとすると、変に尻を突き出したり、背中を曲げたりしてしまう。
 下腹を意識して、足を踏み締めて歩くうちに、楽に身体感覚に統合を感じられるようになってきた。意識が自分自身に硬く集中してきて、周囲の状況がはっきりと見える。

 ふと疑念を感じた。かつては一瞬で周囲の空間の隅々まで把握し、支配下に置けたが、それは感覚が周囲の空間に拡大していったのだと考えていた。しかし、今はどんどん硬く意識が自分自身に集中していくのを感じる。意識は自分自身にどんどん集中していくのに、逆に周囲の空間が現実感を増してはっきりと感じられる。少し前に考えていた感覚と、今現に感じている感覚が矛盾するように思えた。
 だが、今感じている感覚に比べると、少し前まで考えていた感覚は現実感のないスカスカの空想に過ぎない気もする。それに、以前も極度に自分自身に意識を集中する事で自分を客観化し、そうする事で逆に視野を拡げた。要するに、集中と拡大は矛盾しないのかもしれない。

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|この身体、この精神 | 18:39 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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