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「観念の形」

 二〇〇五年 十一月七日。


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 「杉本博司   時間の終わり」展      森美術館

 ただ海と空だけから構成される「海景」シリーズは何度か見た事があったが、ひとつひとつの作品の見分けがつかなくて意味が分からなかった。でも、説明パネルに原始の人類が見たのと同じ風景を我々は見る事が出来るかと考え、世界中の海を撮るようになったのだと書いてあるのを見て、やっと意味が分かった。

 三次関数のグラフを立体化した模型を撮影した「観念の形」や、博物館で見た書割の前の動物の剥製はいかにも偽物っぽかったが、片目をつぶって見ると本物のように見え、そのようにカメラのようにものを見る方法を見つけた作者が、カメラを通すと全てが現実となるいう事で製作した「ジオラマ」シリーズ。宮廷の肖像画家が描いた肖像画を元に作られた蝋人形をさらに写真に撮った「ポートレート」シリーズ。これには、肖像画を元に作った蝋人形というのは貴族たちにとっての理想の姿であり、その蝋人形を写した写真が、生身の人間を写した写真より生き生きとして見えるとしたら、生とは何だろうという問いがあるらしい。というように杉本の写真にはコンセプチュアルな雰囲気がある。

 「アジアのキュビスム」展でも思ったのだが、芸術というのがその人の世界の見え方を表現する行為だとすると、全ての芸術は広い意味ではコンセプチュアルなものにならざるを得ないのだと思った。



 レオナルド・ダ・ヴィンチ展    森アーツセンターギャラリー

 ダ・ヴィンチの研究と思索が、ノートに細々と書かれている。ダ・ヴィンチについてよく知らない私は、彼の研究熱心さは分かるが、どこから収入を得ていたのか訝った。年表を見ると彼は絵画などを制作する職人だったようだ。会場の説明によると、彼は飽くまで画家であり、彼の自然探求も新たな絵画表現を開拓するためだったという。当時の芸術や科学の体系がどのようなものだったかまるで知らないから、彼が本当のところはどんな人間で、何を考えていたのかは私にはまるで分からなかった。

 レスター手稿にしても、これは眺めて楽しむものなのだろうか。内容の理解できない私には、ただの紙切れでしかなかった。ページのデザインという事では、ぎっしりと細かい文字と図が書き込まれたレスター手稿よりも、他の手稿の方が描かれている図も美しくて好いと感じた。

 彼の思考も表現も無機質で、展示からは天才としての強烈な個性や情熱は感じられなかった。それとも、彼の本心はその精緻な思考と表現の背後に隠されているのか。或いは、個性を重視する近代とは天才の在り方が違うのか。

 まあ、何にしても、杉本博司展でも感じたように、学問も芸術も結局はその人の世界観を表現する行為なのだとは思った。

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